Science Fiction and Fantasy Writers of Japan

last modified: 2005/09/09
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新人賞受賞作家エッセイ


「小松左京賞を受賞して」

有村とおる

「暗黒の城(ダーク・キャッスル)」で第5回小松左京賞を受賞しました有村とおると申します。 受賞してうれしかったのは、受賞パーティーのとき生(なま)小松左京先生、生豊田有恒さん、生堀晃さんにお目にかかれたことです。 私にとってこの三人はSFにどっぷり浸かっていたころ、もっともよく読んだ作家で、ほとんど現実に存在するとは思えないくらい伝説に包まれた人たちでした。 小松先生の雄大な作品、豊田さんの気の利いたショートショート、堀さんのトリニティ、幻想にとらわれていた私の二十歳代がそっくりそのまま現実化したような錯覚を覚えました。 私は日本文学をほとんど読みません。漱石は「猫」と「坊ちゃん」しか読んでいないし、鴎外は漢字が多すぎて読む気がしません。 太宰にいたっては、「人間失格」と「斜陽」を読んだのですが、「こんなつまらない本を書いて、紙資源の無駄だ」と思ったくらいです。 日本で尊敬する作家といえばSF作家くらいです(司馬遼太郎氏を除く)。 だから小松左京賞を受賞して、生の作家に会えて、ほんとうによかった。
ある人が「作家が自分の作品を説明するのはもっとも愚かなことだ。 テクストで表わされたもの以外、語るべきではない」と言っています。 でも、それも偏見だと思うのですよ。 人は子供の悪口を言われたとき、弁明したくなるじゃありませんか。 だから、ちょっと作品の弁明をさせてくださいね。 あの作品は、もともと「ゲームクリエイター」との題で一年半の間書きつづけたものです。 応募の直前に「その題では売れないよ」と言われて、二週間かけて「闇のなかに・・・」という妙なタイトルを考え出しました。 いまでも、「ゲームクリエイター」のほうがよかったな、と後悔しています。 ネットでの作品の評価をみると、「困ったな」と感ずることが多々あります。 笑ってしまったのは、「主人公の優作がバカすぎる」というものでした。 ほんとうにバカなんですよ(笑)。 優作は最初から最後まで登場するけれど、いわば狂言回しのようなものです。 それに、優作の(心的イメージ上の)モデルは、(ノストラダムスの予言を信じて結婚を遅らせた)長島一茂氏ですから、ちょっとぼんやりのほうがふさわしいのです(一茂さん、失礼)。 物語の主人公は美咲と首藤光希です。 でも、隠れたほんとうの主人公はすべての人のゲームクリエイターである「神」です。 美咲は神のなかに人の存在の意味を見出し、首藤光希は神に反抗して滅びます。 私が四十年間考えてきたのは、この「神」の問題なのです。
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