last modified: 2005/09/09
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新人賞受賞作家エッセイ
「左利きの話」
青木 和
先日、右の手首を傷めた。 捻挫のような痛みで、じっとしていれば何ともないが力を入れて捻るとつらい。 場所が手だけに治りかけたと思うとつい使ってしまい、完治するまでえらく時間がかかった。 特に無理な動きをした覚えもなく、原因はよく分からない。 ソリティアのやりすぎという説も一部にあるが、それはさておき。
右手に痛みのある間、日常生活のすべての動作を左手でできないものかと、ふと考えた。
実は、私は生来左利きである。 育った時代の風潮には逆らえず箸や筆記具は右で使うよう矯正(強制?)されたが、よく使うのはやはり左、どちらか手を出せと言われれば今でも考える前に左手が出る。 ならばこれを機会に完全な左利きに復活してみようと、どうでもいいことを真面目に目論んでみたのである。
結果。
右手でしかできないことが意外に多いことに気がついた。 最大の難関と思われた箸や筆記具は、実はそれほどでもない。 むしろマウスや包丁のように、「右手で使うことを前提として作られているためなんとなく最初から右手で使っていたもの」のほうが強敵だった。 考えてみれば、これらの道具は生まれてこの方、一度も左手で使ったことがないのだ。
生粋の左利き人は、これらの道具を左手一本で使いこなしているらしい。 すばらしい適応力だと、軟弱両手使いは深く尊敬したのである。
両手使いの器用貧乏という言い回しが一般的なのかどうかは知らないが、今回ははからずもそれを証明する結果となってしまった。 右と左できっちり分業が成り立っている分、どちらの手も半人前だ。
ただ、両手使いにも取柄はある。 鏡文字が完璧に書けることだ。 ――まあ、宴会芸くらいにはなるかもしれない。
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